春先は人のこころが波立つようです。
坂口安吾さんの短編小説、『桜の森の満開の下』にも、『花の季節になると、旅人はみんな森の花の下で気が変になりました』と、この季節の狂おしい状況が描かれています。
そんな木の芽どきの胸騒ぎの所為か、私も春先には目覚めの悪い夢を見ることが多いのです。
夢の内容をはっきりと覚えていないことが多いのですが、何となく毎日、悪い夢を見ているような気がします。
歳をとると眠りが浅くなるようで、そのことから夢を見ることも多くなるのかも知れませんが、幸いなことに頭の方もそれなりに緩くなっていますので、嫌な夢も漠然とした記憶としてしか残っていないので助かります。
そこで、今日は悪い夢の登場人物(?)・・・のような写真です。
「写真を撮ろう・・・」と云う気持ちになる動機にはいろいろあるでしょうが、カメラを手にした人たちの多くが、「きれい」とか「可愛い」とか「記憶に残しておきたい」といった動機でシャッターを押します。
この時期だと桜の花を見て「きれい」と携帯電話のカメラを花に向けます。
私も桜の花を奇麗と思う気持ちは歳とともに強くはなってきていますが、まだまだ花の写真を撮る気持ちにはなれていません。
根性が曲がっているものですか、皆さんが「きれい」と言って写真に撮っているなら、あえて自分が撮らなくてもよい・・・なんてへ理屈を考えてしまします。
そんなへそ曲がりが写真を撮る動機の一つに、「なんか変」と云うのがあります。
普通じゃないものを目にしたときに撮ってしまうのです。
可愛いはずの「白雪姫」や「パンダ」がちょっと怖い形相をしている。
一般的な観念とか日常見慣れたものとかが、私の性分のように歪んで見えたとき、そのズレをみたいなものを面白がるのです。
坂口安吾さんの短編小説、『桜の森の満開の下』の冒頭部分でも、『桜の花が咲くと人々は酒をぶらさげたり団子(だんご)をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれて陽気になりますが、これは嘘です』とありますように、「白雪姫」や「パンダ」が可愛いと云うのは嘘です・・・なんて。