鳥取県西伯郡伯耆町|植田正治写真美術館 / LEICA M8.2 + ELMARIT-M 28mm F2.8 / JCCP05.045
植田正治先生は私の敬愛する写真家です。
私が務めていた大学の先生でしたが、常に大学に居られる、いわゆる常勤の先生ではありませんでした。
月に一回、三日間くらいの予定で鳥取から大学に出た来られました。
大学に来られたときに、授業の手伝いをしたのが、当時はまだ若かった私でした。
植田先生は人の名前を覚えるのが苦手のようで、私の名前をなかなか覚えて頂けなかったことが、今では懐かしい思い出となっています。
以来、植田先生が退職されるまで、実に多くのことを教えていただきましたし、個人的にも、たいへんお世話にもなりました。
私の研究室の日だまりで居眠りをされている姿、
そのあたりに転がっているものを、何でも嬉しそうに並べて写真を撮って居られる姿、
よく行った喫茶店で、コーヒーに砂糖をたくさん入れて
コーヒーの底に沈んだ砂糖をスプーンで掬って食べて居られた姿・・・
みんな懐かしい思い出です。
植田正治先生から学んだことのなかで、一番大切にしていることは「写真を楽しむこと」です。
「おっ、面白い」
「絵になるな〜」
などと、つぶやきながら実に楽しそうに写真を撮って居られました。
ふらふらっと被写体に近づき、さらっと撮られるのですが、そこにはちゃんと〈植田調〉の写真が撮れているのですから驚きでした。
何をどう撮る・・・なんてことをしかめっ面をしながら、小首を傾げながら撮っている姿を見たことは一度もありません。
大学で、私の暗室を使ってプリントをされていましたが、実に手際よく、ササッとされるのですが、出来上がった写真は植田正治の写真以外の何ものでもない素晴らしいものでした。
やはり、もの作りの原点は、自らが楽しむことにあると学びました。